2013年05月18日

第16番札所 水澤観音


坂東三十三ヶ所 第16番札所 水澤観音





五徳山 (ごとくさん)  水澤寺 (みずさわでら)     通称 水澤観音

〔所在地〕 (上野国) 群馬県渋川市伊香保町水沢214

〔宗派〕 天台宗

〔開基〕 恵灌僧正 (えかんそうじょう)

〔創建〕 推古天皇の朝 (593~629)

〔御本尊〕 十一面千手観世音菩薩 (秘仏)

〔御真言〕 おん ばざら たらま きりく





〔略縁起〕 『縁起』には、「推古天皇の朝に当り、上野の国司高光中将菩提の所となさんがため、奏聞を経、御勅宣を以て高麗来朝の僧恵灌僧正を南都より請待し、開山別当と為し、伊香保御前御守持の千手観世音菩薩を安置し建立する寺なり」とある。 以来、歴代天皇の勅願寺として、また上野の国司の菩提所として栄えた。
 伝承によると、持統天皇の時代(690~97)には国司と水沢寺門徒が対立し御堂30余棟、坊舎300余棟、仏像180余体が焼失したと伝えられている。 その後、東円によって再興され寺運も隆盛するが、永正8年(1511)と大永2年(1524)の火災により多くの堂宇が焼失したが、その都度再建を重ねた。 
 江戸時代に入ると幕府から庇護され朱印状を賜り、伊香保温泉の湯治客や坂東三十三ヶ所巡礼が盛んになり再び隆盛した。
 現在の水澤寺は、天明7年(1787)に再建された観音堂や仁王門、六角二重塔があり、それぞれ渋川市指定重要文化財に指定されている。
 御本尊は伊香保姫の御持仏の十一面千手観世音菩薩と伝えられ、霊験あらたか、七難即滅七福即生のご利益がある。



御本尊の御影




御住職の法話

      五徳のこころ                水澤寺住職 山本徳明

 五徳山水澤寺は、推古天皇の祈願により創立以来千三百有余年、年中お参りの絶えない所です。
 山号、五徳山は、水の五つの徳をたたえたもので、五徳とは一、〝常に己れの進路を求めてやまざるは水なり〟 居着いても止まることなく自分の進路に向かって進みなさい。 二、〝自ら活動しで他を動かすは水なり〟 自分から進んで動きなさい。 三、〝障害に逢ってその勢力を倍加するのは水なり〟 障害にぶつかればぶつかった時以上のカをつけて進みなさい。 四、〝自ら潔くして他の汚濁を洗い而して、清濁併せいるは水なり〟 怠けないで悪い人も良い人も一緒に連れて行きなさい。 五、〝洋々として大海を充し、発しては雲となり雨と変じ凍っては玲瓏たる氷雪と化して、其の性を失わざるは水なり〟 長年連れ添った妻を今になってイヤになったというようなことはしてはいけない、の五つで、一切の生命を生かそうとする観音さまのお心から出てきたものです。 私は「如何なる国、如何なる所でも一刹那として観世音の光の中にあって世間をみて、目にみえる物、心の感じるもの一つ一つを生かそうと努力する」気持ちが強く、ご本尊をお参りせず去ろうとする人を大声で叱りとばしたことがあります。
 観音さまはいわば自然の声ですから自然にお参りしてほしい。 心の向くまま、どんなことでもよい、熱心におがめばよいのです。
-『板東三十三所観音巡礼』から-



納経帳
    〔御墨書〕      「奉拝」   「上野国」
                梵字「キリク」   「千手大悲閣」
                「水澤寺」
    
    〔御朱印〕      「坂東十六番」
                蓮華宝珠の中に、八つの梵字種子
                「サ」
                「バイ」?  「カン」
                「キリク」 「サ」 「キリク」 「キャ」 「カン」
                「水澤寺印」




御宝印
蓮華火焔宝珠の中に八つの種子
上段に中尊として、観世音菩薩の種子「サ」
脇侍仏として、右に不動明王の種子「カン」、左に毘沙門天の種子「バイ」か?
下段に、五観音の種子か?
右から、馬頭観音「カン」・十一面観音「キャ」・千手観音「キリク」・聖観音「サ」・如意輪観音「キリク」であろうか?



※ 納経帳の御本尊の種子が御墨書と御朱印とでは異なっているのは何故だろうか?
御墨書では「キリク」、御宝印には「サ」が使われている。
 お寺の話では、この御宝印の起源については不詳であるが、原型は江戸時代まで遡ることができるという。
 閑人思うに、江戸期以前には、「水澤寺の観音さま」と信仰され、単に「観世音菩薩」の種子「サ」が使われてきたのではないかと。 創建は古く、第13番札所浅草寺と同じく推古朝であるという。 奈良法隆寺の百済観音と同時代のものか。 浅草観音も水澤観音もどちらも秘仏であり、御開帳の例はなく、確かめる術はない。
 脇侍仏は不動明王と毘沙門天であろう。 但し、毘沙門天の種子「バイ」が特殊である。 「バイ」に「アー点」が付く。 正確には、「バ」に「アウ点」となるので、「バウ」と読むべきか。 この様な種子にはお目にかかったことがないので閑人には判らない。 御影や御宝印に、観音様の脇侍仏として不動明王と毘沙門天が画かれているのは、他にも15番白岩観音・29番千葉寺・30番高蔵観音に見受けられることから、毘沙門天の種子「バイ」に違いないと思うのだがどうであろうか。
 下段の五つの種子は、六観音ならぬ五観音を表しているのだろうか?
 いずれにしても、江戸期以前には、この様な安置型式で仏様が祀られていたのではないだろうか。 しかし幾多の変遷を経た水澤寺は、今日では御宝印どおりの安置型式はとられていないとのことである。



御宝印の種子

          毘沙門天 ?       観世音菩薩「サ」      不動明王「カン」



   如意輪観音       聖観音       千手観音      十一面観音     馬頭観音






        たのみくる  心も清き  水澤の
                         深き願いを  得るぞうれしき




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