2013年07月16日

第22番札所 北向観音

坂東三十三ヶ所 第22番札所 北向観音





妙福山 (みょうふくさん)   佐竹寺 (さたけでら)     通称 北向観音

〔所在地〕 (常陸国)  茨城県常陸太田市天神林町2404

〔宗派〕 真言宗豊山派

〔開基〕 元密上人 (げんみつしょうにん)

〔創建〕 寛和元年(985)

〔御本尊〕 十一面観世音菩薩

〔御真言〕 おん まか きゃろにきゃ そわか




〔略縁起〕 佐竹寺は清和源氏の一家系である中世の常陸国の武家であった佐竹氏ゆかりの寺である。
 創建は『坂東霊場記』によれば、寛和元年(985)に坂東巡礼中の花山院が随行の元蜜上人に聖徳太子作の十一面観音像を与えて建立させたとされている。
 約250年を経た保延6年(1140)、源義光の孫の源昌義(初代佐竹昌義)は御本尊に深く帰依し、居城の鬼門除けに寺領を寄進し、佐竹氏代々の祈願所と定め、寺観を大いに整えた。 昌義はこの寺で節が1つしかない竹を見つけ、これを瑞兆とし、佐竹氏を称したとされる。
 天文12年(1543)に兵火により焼失するが、同15年に佐竹氏18代佐竹義昭が佐竹城の鬼門除けとして現在地に再建した。 北向観音といわれる所以である。 最盛期には六支院と三ヶ坊を有したが、関ヶ原の合戦の後、慶長7年(1602)佐竹氏が出羽に移封されたことにより衰退する。 それでも、江戸時代は坂東三十三観音霊場の二十二番札所としての賑わいがあったが、明治に入っての廃仏毀釈より寺門は急速に荒廃した。 本堂が明治39年特別保護建造物、昭和4年に国宝に指定されながらも無住の寺となっていた。 昭和24年前住職が普山、その努力によって漸く寺観も整い今日に至る。


御本尊の御影




御住職の法話

     霊験について                佐竹寺前住職 高橋隆宥
 これは「坂東霊場記」にのせてある話ですが、江戸時代のある夏の日のことでした。 駿河の国富士曲村の矢作又右衛門が坂東巡礼のとき、もう五、六町で佐竹寺へ着くというところで、折からの炎暑のため路傍に倒れてしまいました。 自分はたとえ道芝の露となってもかまわないが、故郷に残してきた年老いた母のことが気にかかって悩んでいました。
 そこで一心に観音さまを念じておりますと、一人の僧が現われ、「十句観音経」を授け、持っていた瓶水を身にそそいで「早く我が寺へ来るべし」と告げて立ち去りました。 すると又右衛門の苦しみは洗うが如く去り、佐竹寺へお参りすることができたのです。 そして、あの僧こそ佐竹寺のご本尊十一面観音さまの化身であったとますます信心を深めたというのであります。
 このような霊験を語ることは、次元の低い世界の話だなどという人もありますが、それは間違いだと思います。 信仰には必ず現証がともないます。 ですから私たちはそれをすなおに有難く受けとっていけばよいのです。 佐竹氏がこのご本尊さまから煩いた霊験も実に尊いものです。 佐竹城の鬼門除け、その故に「北向観音」といわれるご本尊さまを、どうぞ深くご信仰になられ、「厄除け」のご霊験を皆さまもお受けくださるよう祈ってやみません。
-『板東三十三所観音巡礼』から-



納経帳

   〔御墨書〕    「奉拝」
             梵字「キャ」  「大悲殿」
             「佐竹寺」

   〔御朱印〕    「阪東二十二番」
             蓮華宝珠の中に、十一面観音の種子「キャ」
             寺紋(佐竹氏の家紋)「扇に月丸」  「佐竹寺章」
             「國寶」




佐竹氏の家紋「扇に月丸」


※ 佐竹氏の家紋は「扇に月丸」である。 一般的には「日の丸扇」と呼ばれているが、「五本骨扇に月丸」が正しいものである。
 佐竹氏の「扇に月丸」紋については、『吾妻鏡』の文治五年(1189)八月二十六日条に、「佐竹四郎(第三代秀義)、常陸国より追って参加、佐竹持たしむる所の旗・無文(紋)の白旗也。 二品(源頼朝)咎めしめ給ふ。 御旗と等しくすべからざるの故也。 よりて御扇を賜ひ、佐竹に於いては、旗の上に付くべきの由、仰せられる。」とある。 これを受けて、『佐竹系図』では、以後「五本骨月丸扇を旗に結び家紋とした」とある。
 佐竹氏は源頼朝と同じ清和源氏であり、『別本佐竹系図』には、「家紋、隆義(第二代)までは白旗なり。 秀義(第三代)のとき頼朝に従い、始めてこの紋を賜るなり」と記されている。 源頼朝から賜った扇を旗に付けたことから、次第に家紋に変化していったものである。



十一面観音の種子「キャ」




        ひとふしに  千代をこめたる  佐竹寺
                       かすみがくれに  見ゆるむらまつ





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