2013年09月13日

第28番札所 滑河観音


坂東三十三ヶ所 第28番札所 滑河観音





滑河山 (なめかわさん)  龍正院 (りょうしょういん)    通称 滑河観音

〔所在地〕 (下総国)  千葉県成田市滑川1196

〔宗派〕 天台宗

〔開基〕 慈覚大師 (円仁)

〔創建〕 承和5年 (838)

〔御本尊〕 十一面観世音菩薩

〔御真言〕 おん まか きゃろにきゃ そわか





〔略縁起〕 縁起によれば、承和5年(838)、下総一帯が冷害に見舞われた時、領主の小田将治が観世音菩薩に祈願したところ、老僧が小田川から十一面観音像をすくいあげ「この淵より湧く乳水をなめよ」と教えた。 これが滑河の地名の由来で、この観音像を納めて堂を建立したのが始まりという。 開山は慈覚大師円仁で、大師の高弟修円が伽藍を整えたと伝えられる。 江戸時代には天海大僧正が東叡山寛永寺の末寺となるよう下知状(現存)を下された天台宗門の古刹である。
 大きな注連縄がかかる仁王門は永仁6年(1298)の造営。 享保年間(1716~1736)の火災にはこの仁王尊が大きな扇で火焔をあおぎかえし、門前集落を救ったという。 これより火伏の仁王尊として信仰が篤く、竜神型の注連縄が毎年正月8日に奉納される。



御本尊の御影





御住職の法話

    観音さまのご利益              龍正院住職 廣瀬孝泉

 娘が小学校一年生の時、盲腸炎で入院したことがあります。 朝からお腹が痛いと言うので近くのお医者さんに診ていただいたところ盲腸炎、すぐ入院手術をするようにと言われました。 家内は下の子を出産して一ヶ月もたたないので、私が付添いました。
 手術も無事終わり、病室に戻って来ました。 「お腹を切ったところが痛くなったらお父さんの手ををぎゅっと握りなさい。 観音さまが直してくれるからね」 「はい」 幼いながらもわかったのでしょう。 時々「う-ん」と唸りながら私の手を握ります。 少し経つと眠り、また手を握りしめ、を繰り返して夜が明け、一声も泣きませんでした。 翌朝隣室のおばさんが「どうしたのよ、ひとつも泣かないで。 昨夜は眠れないと覚悟していたのよ」とびっくりしていました。 娘は「観音さまが痛くないようにしてくれたの」 「う-ん。 そうだったの。 ありがたいねぇ」
 おかげさまで隣室の方々にも迷惑はかけずにすむし、私もおろおろせずにすみ、これが本当のご利益と感銘を受けたことでした。 小さい時から私と一緒に本堂に上りお勤行をしておりましたため、観音さまのご利益をいただけたと思っております。 その娘も今は二児の母親となり、母子共に健康に暮らしてまいりました。 また、観音様のご縁をいただいて、現在は当山の住職となりました。 二人の孫は得度して、お弟子となりました。
-『板東三十三所観音巡礼』から-




納経帳

    〔御墨書〕     「下総国」
               梵字「キャ」  「観世音」
               「滑河山」

    〔御朱印〕     「坂東二十八番」
               蓮華宝珠の中に、十一面観音の種子「キャ」
               「滑河山龍正院」




十一面観音の種子「キャ」




         音にきく  滑河寺の  朝日ヶ渕
                         あみ衣にて  すくふなりけり




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